子どもが何かをしてすぐに怒ってしまったり、叱ってしまう親御さんもいると思います。
そんな親御さんのためにそのような時どうやって子どもとかかわったらいいのかお話していきます。
「怒ってしまう=ダメな親」ではありません
「子どもを待てなくて怒ってしまう親は、ダメな親なのか?」
と、悩みを持つ方もいるでしょう。
子どもは何でもすぐにはできないと頭でわかっていても、急いでいたりすると、どうしても子どもの行動を待てなくて、言うことを聞かせようと怒ってしまう…。
あるお母さんは、保育園から帰ろうとしない2歳ぐらいの息子に怒って、自分だけ先に途中まで帰ってしまったそうです。
途中で気になって引き返したら、号泣している我が子と、心配した見知らぬおばあちゃんの姿が。
その光景を見て、
「私は母親失格だ…。」
と自己嫌悪になったそうです。
いつもなら穏やかに子どもとかかわることができるのに、余裕がないとき、何かうまくいかないことが重なったときに、自分でも感情をコントロールできなくなり、つい怒ってしまう。
そして、その後、反省し、後悔する。
このように日々葛藤しているお母さん、お父さんは少なくないように思います。
まずお伝えしたいのは、そんなお母さん、お父さんは、モンテッソーリ教育においても、子育て全般においても、
「ダメな親では決してない」
ということです。
子どもに怒ってしまう、イライラしてしまうのは、決して母親失格、父親失格ではありません。
大切なことは、それを
「当たり前、仕方ないよ」
としてしまうのではなく、子育てという子どもの育ちを助ける作業において、大切なことは何か、自分にできることは何かということを意識していくことです。
そして、できていないことは何かを認識して、自分に必要なことを見極め、試行錯誤を繰り返していくことが何よりも大切で、忘れず にいたいことだと思います。
言葉で注意するだけでは伝わらない
「おもちゃ散らかさないで!」
といつも言っているのに、全然片付けられない。
道路では
「走らないの!」
と注意しているのに全く聞いていない。
ご飯中に
「席立たないで!」
と叱っているのに一向に変化がない。
毎日同じことを注意しているはずなのに子どもの姿が変わらず、イライラしたり、
「何回言ったらわかるの?」
「一体いつになったらわかってくれるんだろう…。」
と不安になったりすることはありませんか?
では、そのようなとき、どのようにかかわれば、大人の思いが子どもに伝わるのでしょうか?
子どもに「いけないことを」を伝える4つのポイント
- やってほしい行動を具体的に伝え、やって見せる
- 子どもの目を見て伝える
- 感情を切り離して伝える
- 繰り返しやって見せる
1つずつ解説します。
① やってほしい行動を具体的に伝え、やって見せる
まず1つ目のポイントですが、これは、4つの中でも一番重要です。
乳幼児期の子どもは、まだ抽象的に物事を考えることができません。
「やめなさい!」
「ダメ!」
などと、やめてほしいことを禁止するだけでは、肝心な、やってほしい行動が何なのかが伝わりません。
禁止だけだと子どもは、
「じゃあ、どうすればいいの?」
となってしまい、行動を変えることが難しくなります。
そのため、具体的にすべきことを教えてもらったり、実際に目の前でやって見せてもらったりすることで、自分のやるべきことがわかり、行動に移しやすくなります。
たとえば、次のような場面です。
・「走っちゃダメ」
→「ここは危ないから歩こうね。お母さんと手を繋いでね」
(図書館で)「うるさい!いい子にしていて」
→「 みんな本を読んでいるから、これくらいの声でお話ししようね」
・「靴、脱ぎ散らかさないで」
→「今から靴を脱いでみるから見ていてくれる?」
と言って、玄関で靴を脱ぎ、揃えて置く動作をゆっくりやって見せる。
このように、具体的にすべきことを伝えたり、実際にやってみせたりすることで、「注意する」というかかわりが、「伝える」というかかわりに変化していきます。
② 子どもの目を見て伝える
次に2つ目のポイントです。
これは、毎回すべての声かけを、子どもの目を見て伝えなければならないということではありません。
子どもの聞く準備が整ってから話そうという意味です。
子どもの関心がこちらに向いていない状態で伝えたいことを話しても、実は全然聞いていなかったということが起きます。
そうすると、私たち大人としては
「何回も言ってるのに全然聞いてない!」
と、労力を使っている割に変化が見られず、余計にイライラしてしまうことに繋がります。
それを避けるために、本題を伝える前にワンクッション挟んでから話し始めるというかかわりがおすすめです。
たとえば次のような感じです。
・「〇〇くん!あのね」
と子どもの名前を呼んでから話し始める。
・「ちょっといい?」
・「やっている途中にごめんね」
と断りを入れてから話し始める。
また、朝や夕方の忙しいときは、離れた場所から子どもの姿を見ずに注意したり、声をかけたりすることもあるのではないかと思います。
そのようなときも、
「聞く態勢が整っているかな」
と確認をしてから話すだけで、子どもへの伝わり方が変わっていきます。
話しかける前に、ちょっと立ち止まってお子さんの様子を確認してから話してみてください。
③ 感情を切り離して伝える
3つ目のポイントは、感情的にならないようにすることです。
感情のままに、
「いい加減にしなさい!」
「何回言ったらわかるの!」
と怒っても、残念ながら子どもに伝わる情報は、
「お母さん怒っている」
「お父さんに怒られた」
ということだけです。
そのため、怒りのままに言葉を発してしまわないよう、大人の感情をコントロールすることが大切です。
自立に向かって育んでいきたい力は、
「大人に注意されるからやる力」
ではなく、
「自分で考えて行動する力」
です。
子どもが主体的に行動する力を身に付けられるようにするためには、注意して子どもを動かそうとするのではなく、感情を切り離して、やってほしい行動を冷静に具体的に伝えることが必要です。
子どもの行動に反応してすぐに言い返したり、何か言いたくなってしまったりする場合は、言葉を発する前に一度、深呼吸してみましょう。
あるいは、いったんその場を離れるのもオススメです。
注意したい子どもの姿を目の前にしながら冷静になることは、とても難しいことです。
まずはその場から離れて、一度気持ちを落ち着かせたり、違うことを考えたりして、ふっと湧いた感情のままに言葉を発してしまわないよう、クールダウンしましょう。
④ 繰り返しやって見せる
乳幼児期の子どもは、自分の要求をコントロールして、善悪を判断して行動する力を育んでいる最中です。
この時期は、まだ抽象的な思考はできませんが、「吸収する力」はあります。
その力のおかげで真似をすることがとても得意な時期なので、大人がモデルとなってやって見せることで、子どもはその姿をどんどん吸収していきます。
しかし、それはたった一回では、できるようになりません。
だからこそ何度も繰り返し伝え、やって見せるかかわりが必要になるのです。
これが最後のポイントです。
大人にとっては少し忍耐のいるかかわりかもしれませんが、大人のそのかかわりが子どもの成長を助け、子どもが自分の足で歩んでいくことに繋がります。
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