生まれて最初の3年間は言語獲得の重要な時期
言葉というのは、誕生したとき、すでに獲得しているこのではなく、誕生後に自ら獲得していくものです。
誕生時にすべての子どもが持っている能力は、
「自分のいる環境に必要な言語を獲得する力」です。
この力を使って、子どもは最初の3年間で一気にたくさんの言葉を獲得し、その後さらに言語を洗礼させて自分のものにしていきます。
そのために欠かせないことは、言語のインプットです。
たくさん言葉をかけてもらい、意思疎通を図り、対人のコミュニケーションをとりながら、子どもは言葉を獲得していきます。
人は、聞いたことも見たこともない言葉を話せるようになることはありません。
インプットがあるから、アウトプットすることができるのです。
0~6歳にどのような言葉を吸収するかが大切
この言語を獲得していく0~6歳の乳幼児期は、特に、どんな言葉をインプットできるかに配慮することが大切です。
この時期は、子ども自身が、使うべき言葉の基準をまだ獲得していません。
不適切な言葉や人を傷つけるような言葉であふれた環境にいると、その言葉を当たり前のものだと思い、自分の一部として獲得してしまいます。
そのため、子どもの周りにどんな言葉が溢れているかということに配慮して、環境を整えることも、大人の役割の一つになります。
まずは一番近くにいる大人が、美しい言葉や豊かな表現で話しましょう。
それが、子どもの言語発達、情緒面の発達を助け、物事の捉え方や人格形成にも影響を与えていきます。
なんでも
「すごい!」
「やばい!」
と表現するのではなく、
「この色がきれいだね」
「今日はとっても寒いね」
など言葉を豊かに使って大人が表現することで、子どもも豊かな言葉を自然と獲得していくことができます。
そして、五感をフルに使って感じ、豊かな言葉で表現することで、感性を育むことにも繋がります。
言葉使いが気になるときは望ましい表現方法を伝えていく
子どもが触れるメディアや絵本なども、子どもの年齢が低いうちは、大人が選別して環境を整えることが大切です。
しかし、年齢が上がり、友達と触れ合ったり、好みが出てきたりすると、自分で見るもの、聞くものを選ぶようになり、どうしても様々な表現に触れることが避けられなくなってきます。
そのような場合は、直接的に指摘するのではなく、より良い表現方法を伝えていきましょう。
直接的に否定しない
たとえば、仮に大人がなにか声をかけたとき、子どもが
「うるさいな!」
と言ったとしましょう。
そのような場面では、大人がより適切な表現方法を伝えていくと良いのですが、
「そんなこと言わないの!」
「『うるさいな!』じゃないでしょ!」
と直接的に否定すると、子どもと大人の争いが始まってしまいます。
「うるさいな!」
と言ってきたときは、もしかすると本当に声かけがうるさかったのかもしれません。
「もうわかってるってことね。『うるさいな』だとわからないから、『わかってる』って教えてほしいな」
などと、他の表現方法を伝えていくことがおすすめです。
必要以上に反応しない
また、幼児期は、
「うんち」
と言うだけで転げるほどに大爆笑が起こる時期です。
「もう!うんちなんて言ってないの~」
などと反応すると、自分の発言で大人が反応してくれたと、子どもは嬉しくなって、また同じように楽しんで
「うんち」
を連発するようになります。
子どもが
「うんち」
と言って喜んでいるときや、大人の反応を楽しんでいるときは、必要以上に反応せず、他の話題を持ち出したり、その場を離れたりしましょう。
興味を持ったときが学びのチャンス
逆に、その興味に蓋をせず、あえてうんちや身体の話をしたりするのもおすすめです。
図鑑や絵本などの視覚教材を使って、うんちの出る仕組みを説明したり、色々な動物のうんちを比べたりするのも、
「うんち」
に興味津々だからこそ楽しむことができます。
「おちんちん」
「おっぱい」
などの身体に興味を持っているときは、性教育を始める絶好のチャンスでもあります。
視覚教材を使って、男女の身体の違いや機能の違い、どのように赤ちゃんができるのかなどを話す、とてもいい機会になりますよ。
TPOを知らせる
もちろん、食事中にずっと
「うんち」
と言っていたり、公共の場で大きな声で言っていたり、
「やめて」
と言っている人がいるのに子どもが言い続けたりしている場合は、その場の状況に合わせて
「聞いていて、うれしい気持ちにならないから、言わないよ」
などと、すぐに制限する必要があります。
不適切な言葉を言っているときも同様に、その場で制止する必要があります。
どこで線引きするかは大人の判断になりますが、人が言われて傷つく言葉や言葉の暴力に繋がる発言は、
「こういうことは人に対しても、自分に対しても言わないのよ」
と、はっきりと線引きしましょう。
子どもに使ってほしくない言葉は大人も使わない
最後にお話ししたいのが、子どもの言語発達を助けるうえでの大前提
「子どもに使ってほしくないような言葉を、大人が使わない」
ということです。
子どもがぐずって泣いているときや拗ねてメソメソしているときに
「もう、うるさい!」
と言っていたり、子どもが何か間違えたときや失敗したときに
「いい加減にしなさい!」
と言っていたり…。
身に覚えのある方も、いらっしゃるかもしれません。
そのときは、まだ子どもがそうした言葉を使っていなくても、親から言われるたびに、その言葉を子どもにインプットしていきます。
そして、言葉の使い方を理解するようになり、
「うるさい」
という言葉を使う絶好のチャンスが来たとき、ここぞとばかりに
「うるさい!」
とアウトプットするようになってしまいます。
もちろん、親の使う言葉が、子どものインプットする言葉のすべてではありません。
園の先生や友達、メディアや絵本などからもインプットします。
しかし、子どもが望ましくない言葉を使ったときに、
「こういう表現のほうがいいのよ」
と伝えようとしても、その大人が日頃から望ましくない言葉を使っていては、全く説得力がなくなってしまい、子どもに届かなくなってしまいます。
子どもに使ってほしくないと感じるのであれば、まずは大人が、自分自身の言葉づかいに気をつけることが何よりも重要です。
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